くびがおちたはなし
首が落ちた話

冒頭文

上 何小二(かしょうじ)は軍刀を抛(ほう)り出すと、夢中で馬の頸(くび)にしがみついた。確かに頸を斬られたと思う——いや、これはしがみついた後で、そう思ったのかも知れない。ただ、何か頸へずんと音を立てて、はいったと思う——それと同時に、しがみついたのである。すると馬も創(きず)を受けたのであろう。何小二が鞍の前輪へつっぷすが早いか、一声高く嘶(いなな)いて、鼻づらを急に空へ向けると、忽(たち

文字遣い

新字新仮名

初出

「新潮」1918(大正7)年1月

底本

  • 芥川龍之介全集2
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1986(昭和61)年10月28日