一 末雄が本を見ていると母が尺(さし)を持って上って来た。 「お前その着物をまだ着るかね。」 「まだ着られるでしょう。」 彼は自分の胸のあたりを見て、 「何(な)ぜ?」と訊(き)き返(かえ)すと、母はやはり彼の着物を眺めながら、 「赤子(あか)のお襁褓(むつ)にしようかと思うて。」と答えた。 「赤子って誰の?」 「姉さんに