きかい
機械

冒頭文

初めの間は私は私の家の主人が狂人ではないのかとときどき思った。観察しているとまだ三つにもならない彼の子供が彼をいやがるからといって親父をいやがる法があるかといって怒っている。畳の上をよちよち歩いているその子供がばったり倒れるといきなり自分の細君を殴りつけながらお前が番をしていて子供を倒すということがあるかという。見ているとまるで喜劇だが本人がそれで正気だから反対にこれは狂人ではないのかと思うのだ。

文字遣い

新字新仮名

初出

「改造 第十二卷第九號」1930(昭和5)年9月1日

底本

  • 定本 横光利一全集 第三卷
  • 河出書房新社
  • 1981(昭和56)年9月30日