あかいきもの |
| 赤い着物 |
冒頭文
村の点燈夫(てんとうふ)は雨の中を帰っていった。火の点(つ)いた献灯(けんとう)の光りの下で、梨(なし)の花が雨に打たれていた。 灸(きゅう)は闇の中を眺めていた。点燈夫の雨合羽(あまがっぱ)の襞(ひだ)が遠くへきらと光りながら消えていった。 「今夜はひどい雨になりますよ。お気をおつけ遊ばして。」 灸の母はそう客にいってお辞儀をした。 「そうでしょうね。では、どうもいろいろ。」 客はまた旅
文字遣い
新字新仮名
初出
「文藝春秋」1924(大正13)年6月号
底本
- 日輪・春は馬車に乗って 他八篇
- 岩波文庫、岩波書店
- 1981(昭和56)年8月17日