優しき歌 Ⅰ 燕の歌 春来にけらし春よ春 まだ白雪の積れども ——草枕 灰色に ひとりぼつちに 僕の夢にかかつてゐる とほい村よ あの頃 ぎぼうしゆとすげが暮れやすい花を咲き 山羊(やぎ)が啼いて 一日一日 過ぎてゐた やさしい朝でいつぱいであつた—— お聞き 春の空の山なみに お前の知らない雲が焼けてゐる 明るく そして消えながら と