わすれぐさによす
萱草に寄す

冒頭文

[#ここから2字下げ、横書き]SONATINE No.1 はじめてのものに ささやかな地異は そのかたみに灰を降らした この村に ひとしきり灰はかなしい追憶のやうに 音立てて樹木の梢に 家々の屋根に 降りしきつたその夜 月は明かつたが 私はひとと窓に凭れて語りあつた(その窓からは山の姿が見えた)部屋の隅々に 峡谷のやうに 光とよくひびく笑ひ声が溢れてゐた——人の心を知ることは……人の心と

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 立原道造全集 第1卷 詩集Ⅰ
  • 角川書店
  • 1971(昭和46)年6月20日