うずまけるからすのむれ
渦巻ける烏の群

冒頭文

一 「アナタア、ザンパン、頂だい。」 子供達は青い眼を持っていた。そして、毛のすり切れてしまった破れ外套(がいとう)にくるまって、頭を襟の中に埋(うず)めるようにすくんでいた。娘もいた。少年もいた。靴が破れていた。そこへ、針のような雪がはみこんでいる。 松木は、防寒靴をはき、ズボンのポケットに両手を突きこんで、炊事場の入口に立っていた。 風に吹きつけられた雪が、窓硝

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 昭和文学全集 第32巻
  • 小学館
  • 1989(平成元)年8月1日