イー・ペー・エル研究所に絵里子をたずねた僕は、ついに彼女に会うことができず、そのかわり普段はろくに口をきいたこともない研究所長マカオ博士に手をとられんばかりにして、その室に招じられたものである。この思いがけない博士の待遇に、僕は面くらったばかりか、なんだか変な気持さえ生じた。 「おうほ、絵里子はね、——」 おうほと、博士独特の妙な感歎詞をなげるごとに、博士の頤髯がごそりとうごいた。