こうりょうむ
黄粱夢

冒頭文

盧生(ろせい)は死ぬのだと思った。目の前が暗くなって、子や孫のすすり泣く声が、だんだん遠い所へ消えてしまう。そうして、眼に見えない分銅(ふんどう)が足の先へついてでもいるように、体が下へ下へと沈んで行く——と思うと、急にはっと何かに驚かされて、思わず眼を大きく開いた。 すると枕もとには依然として、道士(どうし)の呂翁(ろおう)が坐っている。主人の炊(かし)いでいた黍(きび)も、未(いま)

文字遣い

新字新仮名

初出

「中央文学」1917(大正6)年10月

底本

  • 芥川龍之介全集2
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1986(昭和61)年10月28日