せんねんごのせかい
千年後の世界

冒頭文

冷凍死 若き野心にみちた科学者フルハタは、棺の中に目ざめてから、もう七日になる。 「どうしたのかなあ。もう棺の蓋を、こつこつと叩く者があってもいいはずだ」 彼は、ひたすら棺の外からノックする音をまちわびている。 棺といっても、これはわれわれの知っているあの白木づくりの棺桶ではない。難熔性のモリブデンの合金エムオー九百二番というすばらしい金属でつくった五重の棺である。また

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 十八時の音楽浴
  • 早川文庫、早川書房
  • 1976(昭和51)年1月15日