ロボットさつがいじけん
人造人間殺害事件

冒頭文

その早暁(そうぎょう)、まだ明けやらぬ上海(シャンハイ)の市街は、豆スープのように黄色く濁った濃霧の中に沈澱(ちんでん)していた。窓という窓の厚ぼったい板戸をしっかり下(おろ)した上に、隙間(すきま)隙間にはガーゼを詰めては置いたのだが、霧はどこからともなく流れこんできて廊下の曲り角の灯(あかり)が、夢のようにボンヤリ潤(うる)み、部屋のうちまで、上海の濃霧に特有な生臭(なまぐさ)い匂いが侵入して

文字遣い

新字新仮名

初出

「新青年」博文館、1931(昭和6)年1月号

底本

  • 海野十三全集 第1巻 遺言状放送
  • 三一書房
  • 1990(平成2)年10月15日