こううんのほくろ
幸運の黒子

冒頭文

「どうして、おれはこう不運なんだろう」 病院の門を出ると、怺(こら)えこらえた鬱憤(うっぷん)をアスファルトの路面に叩(たた)きつけた月田半平(つきだはんぺい)だった。 院長は、なーに大丈夫ですよ、こんな病気なら注射の五十本もやれば造作なく治りますよ。ただし五十本が一本欠けても駄目ですよ、それをお忘れのないように——と言った。一回三円として、百五十円の金がいるわけだ。ああ、これがた

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 赤外線男 他6編
  • 春陽文庫、春陽堂書店
  • 1996(平成8)年4月10日