いきているはらわた
生きている腸

冒頭文

妙な医学生 医学生吹矢隆二は、その日も朝から、腸(はらわた)のことばかり考えていた。 午後三時の時計がうつと、彼は外出した。 彼の住んでいる家というのは高架線のアーチの下を、家らしい恰好にしただけの、すこぶる風変りな住宅だった。 そういう風変りな家に住んでいる彼吹矢隆二という人物が、またすこぶる風変りな医学生であって、助手でもないくせに、大学医科にもう七年も

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 十八時の音楽浴
  • 早川文庫、早川書房
  • 1976(昭和51)年1月15日