北緯百十三度一分、東経二十三度六分の地点において、楊(ヤン)博士はしずかに釣糸を垂れていた。 そこは嶮岨な屏風岩の上であった。 前には、エメラルドを溶かしこんだようなひろびろとした赤湾が、ゆるい曲線をなしてひらけ空は涯しもしらぬほど高く澄みわたり、おつながりの赤蜻蛉が三組四組五組と適当なる空間をすーいすーいと飛んでいるという、げに麗らかなる秋の午さがりであった。 楊(