あるうちゅうじんのひみつ
ある宇宙塵の秘密

冒頭文

その夜、テレビジョン研究室の鍵をかけて外に出たのが、もう十二時近かった。裏門にいたる砂利道の上を、ザクザクと寒そうな音をたてて歩きながら、私はおもわず胴震いをした。 (今夜は一つ早く帰って、祝い酒でもやりたまえ。なにしろ教授になったんじゃないか。これで亡くなられた渋谷先生の霊も、もって瞑すべしだ。……) と、昼間同僚たちがそういってくれた言葉が思い出された。祝い酒はともかくも、早く帰っ

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 十八時の音楽浴
  • 早川文庫、早川書房
  • 1976(昭和51)年1月15日