うみにいくるひとびと
海に生くる人々

冒頭文

一 室蘭港(むろらんこう)が奥深く[#「奥深く」は筑摩版では「奥深く広く」]入り込んだ、その太平洋への湾口(わんこう)に、大黒島(だいこくとう)が栓(せん)をしている。雪は、北海道の全土をおおうて地面から、雲までの厚さで横に降りまくった。 汽船万寿丸(まんじゅまる)は、その腹の中へ三千トンの石炭を詰め込んで、風雪の中を横浜へと進んだ。船は今大黒島をかわろうとしている。その島のかなた

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 海に生くる人々
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1950(昭和25)年8月10日、1971(昭和46)年11月16日第12刷改版