しんせい
新生

冒頭文

序の章        一 「岸本君——僕は僕の近来の生活と思想の断片を君に書いて送ろうと思う。然(しか)し実を言えば何も書く材料は無いのである。黙していて済むことである。君と僕との交誼(まじわり)が深ければ深いほど、黙していた方が順当なのであろう。旧(ふる)い家を去って新しい家に移った僕は懶惰(らんだ)に費す日の多くなったのをよろこぶぐらいなものである。僕には働くということが出来な

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 新生(下)
  • 新潮文庫、新潮社
  • 1955(昭和30)年5月10日、1970(昭和45)年1月20日20刷改版