ろぼうのざっそう
路傍の雑草

冒頭文

学校の往還(ゆきかへり)に——すべての物が白雪に掩はれて居る中で——日の映つた石垣の間などに春待顔な雑草を見つけることは、私の楽しみに成つて来た。長い間の冬籠りだ。せめて路傍の草に親しむ。 南向きもしくは西向きの桑畠の間を通ると、あの葉の緑だけ紫色な「かなむぐら」がよく顔を出して居る。「車花」ともいふ。あの車の形した草が生えて居るやうな、土手の雪間には、必つと「青はこべ」も蔓ひのたくつて

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆94  草
  • 作品社
  • 1990(平成2)年8月25日