こどものびょうき いちゆうていに
子供の病気 一游亭に

冒頭文

夏目先生は書の幅(ふく)を見ると、独り語(ごと)のように「旭窓(きょくそう)だね」と云った。落款(らっかん)はなるほど旭窓外史(きょくそうがいし)だった。自分は先生にこう云った。「旭窓は淡窓(たんそう)の孫でしょう。淡窓の子は何と云いましたかしら?」先生は即座に「夢窓(むそう)だろう」と答えた。 ——すると急に目がさめた。蚊帳(かや)の中には次の間(ま)にともした電燈の光がさしこんでいた

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 芥川龍之介全集5
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1987(昭和62)年2月24日