とうせいかつしゃ
党生活者

冒頭文

一 洗面所で手を洗っていると、丁度窓の下を第二工場の連中が帰りかけたとみえて、ゾロ〳〵と板草履(ぞうり)や靴バキの音と一緒に声高な話声が続いていた。 「まだか?」 その時、後に須山が来ていて、言葉をかけた。彼は第二工場だった。私は石鹸(せっけん)だらけになった顔で振りかえって、心持眉(まゆ)をしかめた。——それは、前々から須山との約束で、工場から一緒に帰ることはお互避けていたから

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 党生活者
  • 新日本文庫
  • 1974(昭和49)年12月20日