とんぐん
豚群

冒頭文

一 牝豚(めぶた)は、紅く爛(ただ)れた腹を汚れた床板の上に引きずりながら息苦しそうにのろのろ歩いていた。暫く歩き、餌を食うとさも疲れたように、麦藁(むぎわら)を短く切った敷藁の上に行って横たわった。腹はぶってりふくれている。時々、その中で仔が動いているのが外から分る。だいぶ沢山仔を持っていそうだ。健二はじっと柵にもたれてそれを見ながら、こういうやつを野に追い放っても大丈夫かな、とそんなこと

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 筑摩現代文学大系 38 小林多喜二 黒島伝治 徳永直集
  • 筑摩書房
  • 1978(昭和53)年12月20日