むらのかいだん
村の怪談

冒頭文

私の郷里で女や小供を恐れさすものは、狸としばてんと云う怪物であった。 「某(たれ)さんは、昨夜(ゆうべ)、狸に化されて家へよう帰らずに、某(ある)所をぐるぐると歩いていた」 「某さんは、狸に化されて、朝まで某処に坐っていた」 「某さんは、某さんの処へ寄って、茶を飲まして貰うて、やっと正気になって帰った」 などと狸に化されて、朝まで墓地を歩いていた人の話とか、己(じぶん)の家の方へ帰

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 日本の怪談
  • 河出文庫、河出書房新社
  • 1985(昭和60)年12月4日