ゆみまちより
弓町より

冒頭文

食うべき詩 詩というものについて、私はずいぶん長い間迷うてきた。 ただに詩についてばかりではない。私の今日まで歩いてきた路は、ちょうど手に持っている蝋燭(ろうそく)の蝋のみるみる減っていくように、生活というものの威力のために自分の「青春」の日一日に減らされてきた路筋である。その時その時の自分を弁護するためにいろいろの理窟を考えだしてみても、それが、いつでも翌る日の自分を満足させなか

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 日本文学全集 12 国木田独歩 石川啄木集
  • 集英社
  • 1967(昭和42)年9月7日