かなしきがんぐ
悲しき玩具

冒頭文

呼吸(いき)すれば、胸の中(うち)にて鳴る音あり。 凩(こがらし)よりもさびしきその音(おと)! 眼(め)閉(と)づれど、心にうかぶ何もなし。 さびしくも、また、眼をあけるかな。 途中にてふと気が変り、つとめ先を休みて、今日も、河岸(かし)をさまよへり。咽喉(のど)がかわき、まだ起きてゐる果物屋(くだものや)を探しに行きぬ。秋の夜ふけに。遊びに出(で)て子供かへらず、取り出して走らせて見る玩具

文字遣い

新字旧仮名

初出

「悲しき玩具」東雲堂書店、1912(明治45)年6月20日

底本

  • 日本文学全集12 国木田独歩・石川啄木集
  • 集英社
  • 1967(昭和42)年9月7日