はじめてみたるおたる
初めて見たる小樽

冒頭文

新らしき声のもはや響かずなった時、人はその中から法則なるものを択(えら)び出(い)ず。されば階級といい習慣といういっさいの社会的法則の形成せられたる時は、すなわちその社会にもはや新らしき声の死んだ時、人がいたずらに過去と現在とに心を残して、新らしき未来を忘るるの時、保守と執着と老人とが夜の梟(ふくろう)のごとく跋扈(ばっこ)して、いっさいの生命がその新らしき希望と活動とを抑制せらるる時である。人性

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 日本文学全集 12 国木田独歩 石川啄木集
  • 集英社
  • 1967(昭和42)年9月7日