エスちゅういのはなし
S中尉の話

冒頭文

「まあ皆(みんな)、聞いて呉れ給へ。この僕にもこんな話があるから面白いぢやあないか……」 と、B歩兵聯隊附のS中尉が話し始めたのです。かう云ふと、定めて戰爭の手柄話でも聞かされるのかと、お思ひになるでせう。處が大違ひなんです。この間Mの家で、一昔前(ひとむかしまへ)のA中學校の卒業生だつた我我五人が、久し振りに落ち合つた時の話です。五人と云つても、Mはもう法科大學の四囘生ですし、Yはある商店

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 新進作家叢書22 修道院の秋
  • 新潮社
  • 1918(大正7)年9月6日