ねつ

冒頭文

時候あたりの気味で、此の二三日又少し熱が出た。 いつも、飲めと云われて居る滋亜燐(じあリン)を何と云う事はなしに忘れて、遠のいて居たからだと云われた。 私は、自分の体を少しも、粗末にあつかって居ないと思って自分では居るけれ共、はたのものの、皆が皆、私は体をむごくあつかって居ると云って居る。 何か仕事があると、それに熱中して、体の事を忘れては仕舞うのが癖である。

文字遣い

新字新仮名

初出

「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社、1981(昭和56)年12月25日

底本

  • 宮本百合子全集 第二十九巻
  • 新日本出版社
  • 1981(昭和56)年12月25日初版