若うして死をいそぎたまへる母上の霊前に本書を供へまつる 鉢の子 大正十四年二月、いよいよ出家得度して、肥後の片田舎なる味取観音堂守となつたが、それはまことに山林独住の、しづかといへばしづかな、さびしいと思へばさびしい生活であつた。松はみな枝垂れて南無観世音松風に明け暮れの鐘撞いてひさしぶりに掃く垣根の花が咲いてゐる 大正十五年四月、解くすべもない惑ひを背負うて、行乞流転の旅に出た。分け入つても分