第一部 二十歳 第一章 一 お君は子供のときから何かといえば跣足になりたがった。冬でも足袋をはかず、夏はむろん、洗濯などするときは決っていそいそと下駄をぬいだ。共同水道場の漆喰(しっくい)の上を跣足のままペタペタと踏んで、 「ああ、良え気持やわ」 それが年頃になっても止まぬので、無口な父親も流石に、 「冷えるぜエ」とたしなめたが、聴かなんだ。蝸牛を