せいしゅんのぎゃくせつ
青春の逆説

冒頭文

第一部  二十歳 第一章 一 お君は子供のときから何かといえば跣足になりたがった。冬でも足袋をはかず、夏はむろん、洗濯などするときは決っていそいそと下駄をぬいだ。共同水道場の漆喰(しっくい)の上を跣足のままペタペタと踏んで、 「ああ、良え気持やわ」 それが年頃になっても止まぬので、無口な父親も流石に、 「冷えるぜエ」とたしなめたが、聴かなんだ。蝸牛を

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 定本織田作之助全集 第二巻
  • 文泉堂出版
  • 1976(昭和51)年4月25日