さつじんぎょうじゃ
殺人行者

冒頭文

(一) 闇の収獲 自分は画家であるが自分の最も好む事は絵を描く事でなくて『夜の散歩である』(ママ)。彼の都を当てどもなくあちこちとうろつき廻る事である。殊に自分は燈火すくなき場末の小路の探偵小説を連想せしめる様な怪しき暗を潜る事が無上に好きである。或冬の夜であつた。九時の時計の打つのを聞くとまた例の病がむら〳〵と頭に上つて来た。『さうだ。また今夜も「闇の収獲」に出掛けよう。』と外套をかぶつて

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 村山槐多全集
  • 彌生書房
  • 1997(平成9)年3月10日増補2版