さっかくのごうもんしつ
錯覚の拷問室

冒頭文

1 集落から六、七町(一町は約一〇九メートル)ほどの丘の中腹に小学校があった。校舎は正方形の敷地の両側を占めていた。北から南に、長い木造の平屋建てだった。 第七学級の教室はその最北端にあった。背後は丘を切り崩した赤土の崖(がけ)だった。窓の前は白楊(はくよう)や桜や楓(かえで)などの植込みになっていた。乱雑に、しかも無闇(むやみ)と植え込んだその落葉樹が、晩春から初秋にかけては

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 恐怖城 他5編
  • 春陽文庫、春陽堂書店
  • 1995(平成7)年8月10日