くまのでるかいこんち
熊の出る開墾地

冒頭文

無蓋(むがい)の二輪馬車は、初老の紳士と若い女とを乗せて、高原地帯の開墾場(かいこんじょう)から奥暗い原始林の中へ消えて行った。開墾地一帯の地主、狼のような痩躯(そうく)の藤沢が、開墾場一番の器量よしである千代枝を伴(つ)れて、札幌の方へ帰って行くのだった。 落葉松林が尽きると、路はもはや落ち葉に埋められて地肌を見せなかった。両側には山毛欅(やまぶな)、いたやかえで、斎墩樹(ちさのき)、

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 佐左木俊郎選集
  • 英宝社
  • 1984(昭和59)年4月14日