序言 植物のもつ美のうちで、最も鋭く私達の感覚に触れるものは、その植物の形態(けいたい)や色彩による視覚(しかく)的美であろう。それから嗅覚(きゅうかく)的美、味覚(みかく)的美といった順序ではないかと思う。併し、私達の心の中のロマンチストは、その伝説を聞き、名称の持つ美から、未知の植物に憧(あこが)れることが少なくない。そしてまた私達のセンチメンタリストは、廃墟(はいきょ)に自然が培(つち