きかんしゃ
機関車

冒頭文

一 その線は、山脈に突き当たって、そこで終わっていた。そしてそのまま山脈の貫通を急がなかった。 山脈の裾(すそ)は温泉宿の小さい町が白い煙を籠(こ)めていた。停車場は町端(はず)れの野原にあった。機関庫はそこから幾らか山裾の方へ寄っていた。温泉の町に始発駅を置き、終点駅にすることは、鉄道の営業上から、最もいい政策であったから。 終列車を牽(ひ)いて来た機関車はそこで泊まっ

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 佐左木俊郎選集
  • 英宝社
  • 1984(昭和59)年4月14日