ほねをけずりつつあゆむ ――ぶんだんくぎょうき――
骨を削りつつ歩む ――文壇苦行記――

冒頭文

惑(まど)いし途 私が作家として立とうと決心したのは、廿一の秋で、今から五年前の事である。そうと意志のきまるまでは、随分種々と他動的に迷わされていたが、私を決心に導いてくれたものは私の病気だった。 私は廿一の歳に二度病気をした。第一回目は関節炎で、神田の馬島病院に二週間入院して、弁護士の今村力三郎先生から——私はその頃、今村先生のお宅に書生をしていたのだが——入院料を百円程払って頂

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 佐左木俊郎選集
  • 英宝社
  • 1984(昭和59)年4月14日