がいとうのぎえいきょう
街頭の偽映鏡

冒頭文

1 偽映鏡(ぎえいきょう)が舗道に向かって、街頭の風景をおそろしく誇張していた。 青白い顔の若い男が三、四人の者に、青い作業服の腕を掴(つか)まれて立っていた。その傍(そば)で、商人風の背の小さな男が鼻血を拭(ぬぐ)ってもらっていた。 「喧嘩(けんか)か?」 その周囲に人々が集まりだした。 「何かあったんですか?」 偽映鏡の中に、無数の顔が歪(ゆが)みだした

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 恐怖城 他5編
  • 春陽文庫、春陽堂書店
  • 1995(平成7)年8月10日