ウィタ・セクスアリス
ヰタ・セクスアリス

冒頭文

金井湛(しずか)君は哲学が職業である。 哲学者という概念には、何か書物を書いているということが伴う。金井君は哲学が職業である癖に、なんにも書物を書いていない。文科大学を卒業するときには、外道(げどう)哲学と Sokrates 前の希臘(ギリシャ)哲学との比較的研究とかいう題で、余程へんなものを書いたそうだ。それからというものは、なんにも書かない。 しかし職業であるから講義はする

文字遣い

新字新仮名

初出

「昴」1909(明治42)年7月

底本

  • ヰタ・セクスアリス
  • 新潮文庫、新潮社
  • 1949(昭和24)年11月30日、1967(昭和42)年11月10日27刷改版