うたかたのき
うたかたの記

冒頭文

上 幾頭の獅子(しし)の挽(ひ)ける車の上に、勢(いきおい)よく突立ちたる、女神(にょしん)バワリアの像は、先王ルウドヰヒ第一世がこの凱旋門(がいせんもん)に据(す)ゑさせしなりといふ。その下(もと)よりルウドヰヒ町を左に折れたる処に、トリエント産の大理石にて築(きず)きおこしたるおほいへあり。これバワリアの首府に名高き見ものなる美術学校なり。校長ピロッチイが名は、をちこちに鳴りひびきて

文字遣い

新字旧仮名

初出

「柵草紙」1890(明治23)年8月

底本

  • 舞姫・うたかたの記 他三篇
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1981(昭和56)年1月16日