ついな |
| 追儺 |
冒頭文
悪魔に毛を一本渡すと、霊魂まで持つて往かずには置かないと云ふ、西洋の諺がある。 あいつは何も書かない奴だといふ善意の折紙でも、何も書けない奴だといふ悪意の折紙でも好い。それを持つてゐる間は無事平穏である。そして此二つの折紙の価値は大して違つてはゐないものである。ところがどうかした拍子に何か書く。譬へば人生意気に感ずといふやうな、おめでたい、子供らしい、頗る sentimental なわけで書く
文字遣い
新字旧仮名
初出
「東亜之光」1909(明治42)年5月
底本
- ザ・鴎外 ―森鴎外全小説全一冊―
- 第三書館
- 1985(昭和60)年5月1日