さんしょうだゆう
山椒大夫

冒頭文

越後(えちご)の春日(かすが)を経て今津へ出る道を、珍らしい旅人の一群れが歩いている。母は三十歳を踰(こ)えたばかりの女で、二人の子供を連れている。姉は十四、弟は十二である。それに四十ぐらいの女中が一人ついて、くたびれた同胞(はらから)二人を、「もうじきにお宿にお着きなさいます」と言って励まして歩かせようとする。二人の中で、姉娘は足を引きずるようにして歩いているが、それでも気が勝っていて、疲れたの

文字遣い

新字新仮名

初出

「中央公論」1915(大正4)年1月

底本

  • 日本の文学 3 森鴎外(二)
  • 中央公論社
  • 1972(昭和47)年10月20日