サフラン
サフラン

冒頭文

名を聞いて人を知らぬと云うことが随分ある。人ばかりではない。すべての物にある。 私は子供の時から本が好だと云われた。少年の読む雑誌もなければ、巌谷小波(いわやさざなみ)君のお伽話(とぎばなし)もない時代に生れたので、お祖母(ばあ)さまがおよめ入の時に持って来られたと云う百人一首やら、お祖父(じい)さまが義太夫を語られた時の記念に残っている浄瑠璃本(じょうるりぼん)やら、謡曲の筋書をした絵

文字遣い

新字新仮名

初出

「番紅花」1914(大正3)年3月

底本

  • 新潮日本文学1 森鴎外集
  • 新潮社
  • 1971(昭和46)年8月12日