かみがみのびしょう
神神の微笑

冒頭文

ある春の夕(ゆうべ)、Padre Organtino はたった一人、長いアビト(法衣(ほうえ))の裾(すそ)を引きながら、南蛮寺(なんばんじ)の庭を歩いていた。 庭には松や檜(ひのき)の間(あいだ)に、薔薇(ばら)だの、橄欖(かんらん)だの、月桂(げっけい)だの、西洋の植物が植えてあった。殊に咲き始めた薔薇の花は、木々を幽(かす)かにする夕明(ゆうあか)りの中に、薄甘い匂(におい)を漂わ

文字遣い

新字新仮名

初出

「新小説」1922(大正11)年1月

底本

  • 芥川龍之介全集4
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1987(昭和62)年1月27日