かのように
かのように

冒頭文

朝小間使の雪が火鉢(ひばち)に火を入れに来た時、奥さんが不安らしい顔をして、「秀麿(ひでまろ)の部屋にはゆうべも又電気が附いていたね」と云った。 「おや。さようでございましたか。先(さ)っき瓦斯煖炉(ガスだんろ)に火を附けにまいりました時は、明りはお消しになって、お床の中で煙草(たばこ)を召し上がっていらっしゃいました。」 雪はこの返事をしながら、戸を開けて自分が這入(はい)った時、大

文字遣い

新字新仮名

初出

「中央公論」1912(明治45)年1月

底本

  • 阿部一族・舞姫
  • 新潮文庫、新潮社
  • 1968(昭和43)年4月20日、1985(昭和60)年5月20日36刷改版