おぐまひでおぜんしゅう-06 ししゅう(5)とぶそり
小熊秀雄全集-06 詩集(5)飛ぶ橇

冒頭文

綱渡りの現実  ——綱渡りは公衆の面前に、真逆さまに墜落して横死    した、この詩は彼のポケットにあつたものであるおゝ、愛する観客諸君よ、遺書とは——結局死んでゆく人間の最後の理屈ぢやないか、しかもこの最後の理屈をいふことが死ぬ人間にとつて何といふ難かしいことなんだらう。難かしい理由——それは死んでゆく者の感傷性と理屈とが一致しにくいものだから。——お父さん、さよなら。——お母さん、さよなら。

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 新版・小熊秀雄全集第3巻
  • 創樹社
  • 1991(平成3)年2月10日