にせんどうか
二銭銅貨

冒頭文

一 独楽(こま)が流行(はや)っている時分だった。弟の藤二がどこからか健吉が使い古した古独楽を探し出して来て、左右の掌(てのひら)の間に三寸釘の頭をひしゃいで通した心棒を挾んでまわした。まだ、手に力がないので一生懸命にひねっても、独楽は少しの間立って廻(ま)うのみで、すぐみそすってしまう。子供の時から健吉は凝り性だった。独楽に磨きをかけ、買った時には、細い針金のような心棒だったのを三寸釘に挿

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 筑摩現代文学大系 38 小林多喜二 黒島伝治 徳永直集
  • 筑摩書房
  • 1978(昭和53)年12月20日