しょうぼうとクロ
正坊とクロ

冒頭文

一 村むらを興行(こうぎょう)して歩くサーカス団がありました。十人そこそこの軽業師(かるわざし)と、年をとった黒くまと馬二とうだけの小さな団です。馬は舞台に出るほかに、つぎの土地へうつっていくとき、赤いラシャの毛布などをきて、荷車をひくやくめをもしていました。 ある村へつきました。座員たちは、みんなで手わけして、たばこ屋の板かべや、お湯屋のかべに、赤や黄色ですった、きれいなビラ

文字遣い

新字新仮名

初出

「赤い鳥 復刊第二巻第二号」1931(昭和6)年8月号

底本

  • 牛をつないだ椿の木
  • 角川文庫、角川書店
  • 1968(昭和43)年2月20日