じゅりあの・きちすけ |
じゅりあの・吉助 |
冒頭文
一 じゅりあの・吉助(きちすけ)は、肥前国(ひぜんのくに)彼杵郡(そのきごおり)浦上村(うらかみむら)の産であった。早く父母に別れたので、幼少の時から、土地の乙名三郎治(おとなさぶろうじ)と云うものの下男(げなん)になった。が、性来愚鈍(ぐどん)な彼は、始終朋輩の弄(なぶ)り物にされて、牛馬同様な賤役(せんえき)に服さなければならなかった。 その吉助が十八九の時、三郎治(さぶろうじ
文字遣い
新字新仮名
初出
「新小説」1919(大正8)年9月
底本
- 芥川龍之介全集3
- ちくま文庫、筑摩書房
- 1986(昭和61)年12月1日