その日の朝であった、自分は少し常より寝過ごして目を覚ますと、子供たちの寝床は皆からになっていた。自分が嗽(うがい)に立って台所へ出た時、奈々子(ななこ)は姉なるものの大人下駄(おとなげた)をはいて、外へ出ようとするところであった。焜炉(こんろ)の火に煙草をすっていて、自分と等しく奈々子の後ろ姿を見送った妻は、 「奈々ちゃんはね、あなた、きのうから覚えてわたい、わたいっていいますよ」 「そう