ごじょうたんに ―さもんごじょうのしゅき―
悟浄歎異 ―沙門悟浄の手記―

冒頭文

昼餉(ひるげ)ののち、師父(しふ)が道ばたの松の樹の下でしばらく憩(いこ)うておられる間、悟空(ごくう)は八戒(はっかい)を近くの原っぱに連出して、変身の術の練習をさせていた。 「やってみろ!」と悟空が言う。「竜(りゅう)になりたいとほんとうに思うんだ。いいか。ほんとうにだぜ。この上なしの、突きつめた気持で、そう思うんだ。ほかの雑念はみんな棄(す)ててだよ。いいか。本気にだぜ。この上なしの・

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 李陵・山月記・弟子・名人伝
  • 角川文庫、角川書店
  • 1968(昭和43)年9月10日