ながつかたかしかしゅう 3 げ
長塚節歌集 3 下

冒頭文

明治四十四年    乘鞍岳を憶ふ 落葉松の溪に鵙鳴く淺山ゆ見し乘鞍は天に遙かなりき 鵙の聲透りて響く秋の空にとがりて白き乘鞍を見し 我が攀ぢし草の低山木を絶えて乘鞍岳をつばらかにせり おほにして過ぎば過ぐべき遠山の乘鞍岳をかしこみ我が見し 乘鞍と耳に聲響きかへり見て何ぞもいたく胸さわぎせし おもはぬに天に我が見し乘鞍は然かと人いはゞあらぬ山も猶 くしびなる山は乘鞍かしこきろ山の

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 長塚節名作選三
  • 春陽堂書店
  • 1987(昭和62)年8月20日